現地レポート

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インドにおける一つの成功パターン

桝谷 長男
桝谷 長男
2017/8/15

2017814日、インドの独立記念日の前日に、4年前からインド進出の支援をさせていただいているクライアントのインドでの顧客訪問に同行する機会を得た。4年前から2年間ほどは2か月に一回のペースで共にインドを訪れ、市場開拓を推進してきた。当時はクライアント(男性)の誕生日や私の誕生日だけでなく、クリスマスなどのタイミングで、共にインドで過ごし、互いの誕生日やクリスマスを祝うなどをしてきた(笑)

それだけディープな関係だったことから妻からは二人の関係を疑われたほどだ(笑)。

そんなクライアントも海外担当社員を採用、育成するなどして、当社が同行する必要もなくなったところで20154月にいったん手離れしたコンサルティングファームとして理想的な関わり方ができたプロジェクトであった。

そんなクライアントから諸事情で今回急遽インドに同行する機会をいただき、クライアントのインド顧客の打ち合わせの同席をさせていただいた。

20154月以降、私どもが当該クライアントの支援から外れた後、継続的に交渉、取引を進め、今ではその機械部品において、当該インド顧客は100%をクライアントから調達するまでの信頼関係を構築していたことに驚いた。通常はある程度の規模を有する企業であればリスクヘッジのために複数購買をするのが一般的であるが、なんとそのインド企業はクライアントから100%を調達していたのだ。一社購買は調達側の企業にとってリスクが大きく、圧倒的な信頼関係がなければできないはずである。

クライアントはどうやってその圧倒的な信頼関係を構築したのだろうかとふと考えてみた。そこにはいくつか思い当たることがあった。

まず、部下に任せることなく社長(当時は専務)自ら一度だけでなく何度もインドに足を運び、直接インド企業との交渉に当たっていたことだ。特に今回訪問したインド企業へは20141月から20154月の16か月で12回訪問し、直接インド企業経営者とひざ詰めで交渉してきた。のちに知ったことだが、そのインド経営者はバンガロールで知らない人はいないほど著名かつ尊敬される経営者で、相当に忙しかったはずである。しかし常に交渉に参加し、クライアントと真摯に向き合ってくれた。そのインド企業経営者もすでに70歳を超え、後進に経営を任せ引退された今は、さすがにクライアントとの打ち合わせに参加することはないが、過去の経緯は、当然に今の経営陣に引き継がれており、今の経営陣はクライアントを100%の尊敬の念をもって交渉に当たってくれている。インド企業との交渉は常に値下げ要求と品質の向上を当然のごとく要求され、時には、クライアントも怒り、もう取引中止だと息巻くこともあった。しかしお互いに必要な関係であることを相互に理解しており、結局はうまい具合に絶妙な落としどころに落ち着く。お互いの経営者がひざ詰めで真剣に10数回にも及び交渉してきたことで、相互の信頼関係が醸成され、もうその信頼関係は簡単なことでは崩れない。

今回のミーティングで担当者は「確かに日々いろいろな企業から今より安い価格で提供するなどの営業はあるが、常に断っている。それは納期、品質など価格だけでない様々な要素が重要であり、さらに経営者同士が強い信頼関係にある中で取引を切り替えるなんてことはありえない」と話していた。インド企業の要求は価格、価格、価格と思われがちだが決してそうではない。品質、そして顧客満足度を最重要ととらえるインド企業が特に製造業では多い。

確かに1年半ほぼ毎月のインド出張は確かに手間暇とコストかかったが、一度相互の信頼関係を経営者レベルで構築してしまえば、今後数十年の取引は安泰である。そして忘れてはならないことは、インドは今後人口が中国を抜き世界最大となり、経済成長が最も期待されている国ということだ。今後の取引の拡大は黙っていても確実であり、当初の手間暇などすぐに回収できるだろう。

どこの国でもいえることではあるが、インドでは特にオーナー経営者の決定は絶対であり、そのオーナー経営者が決定したことは相当なことがない限り覆ることはない。そのオーナー経営者と強固な信頼関係を構築する、ここに一つの大きな成功の要因があるのではないか。言ってしまえば当たり前のことのような気もするが、それは口で言うほど簡単なことではない。経営者自らインドに出向き、直接インド企業経営者と向き合いひざ詰めで交渉する、そしてそれは信頼関係が構築されるまで何度でもだ。

インド専門の経営コンサルタントとして、日本企業がインドで成功するためにどうしたらいいのか、勝ちパターンは何かと日々模索している中で、大きな気づきをもらった今回の同行であった。

結局、国も文化も人種も違っても、まずは経営者レベルでの相互の信頼関係の構築することが大きな勝ちパターンの一つである。そしてそれは一朝一夕で構築できるものではない。時間をかけて、面倒くさがらずに経営者自ら直接インド企業と向き合うこと、ビジネスで一番基本的な当たり前のことだが、それが一番大切なことなのかもしれない。