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インドでLLPの起業形態が急増した理由

桝谷 長男
桝谷 長男
2017/9/27

・インドではLLP形態での起業が急増しており、この背景には既存の株式会社形態よりも会社運営を柔軟に行えると同時に税金負担が少ないなどのメリットが大きいことがある
・また最近の規制緩和でLLP形態に対しても外国直接投資や対外商業借入が可能となり、資金調達もより容易になっている
・一方で、会社運営に大きな裁量が認められているからこそ、経営陣の透明性、遵法精神が強く求められる


最近、インドで一般的な
Private Limited(株式会社)でない、LLPLimited Liability Partnership)型の企業形態が増えている。実際に調べたところ、20172月時点でのデータになるが、2012年以降で6倍以上になっているようだ。この同じ期間で株式会社形態での企業数が2倍程度になっていることと比較して極めて増加している。LLP形態の企業の急増の背景には何があるのだろうか調べてみた。

まず、LLP形態の会社設立が導入されたのが、2008年である。LLPは内部統制上においてによって規制されている既存の会社とは異なり、LLPはパートナー間の契約によって統治されることになっている。つまりは、既存の会社と比較してより柔軟そして緩いコンプライアンス体制のもと会社運営を行うことができることになっている。

20172月時点で約85,000社以上がLLP形態で設立されている。しかもこのうち2016年内の設立は合計で26,977社にも及び、全体の約28%が昨年内に設立されたことになる。Trilegal(インド弁護士事務所)のパートナー弁護士であるウパサナ・ラオ氏によれば、「LLPの急増の背景にはいくつかある。一つは起業数の絶対数の増加、2つ目はより小さい会社にとって、管理コストや税金面の負担が軽くなることがあげられる」と語っている。

また2013年に会社法が改正されて以降、多くの企業が既存の株式会社からLLPへシフトしている傾向も見て取れる。20143月までに2,039社がLLPへ移行しており、これは同年のLLP設立数のおよそ9%に当たる。

LLPが増加する傾向にあることは極めて健全だとM&Aアドバイザリー業務を営むBODインドのパートナーであるラジェッシュ・タッカーは語る。「株式会社と比較して、より緩いコンプライアンス対応が許されている点等を考慮すれば、特に創業時においてはLLPであるほうが企業は運営しやすい。また同時に創業者の観点からみても、個々のパートナーの利益を保護する側面も有しておりこの点からも健全である。

またLLPには税金面での優位性もある。利益はパートナーに対して無税で分配される。株式会社と異なり、配当の形式での利益分配には、税金がかかるがパートナーへの分配はタックスフリーであるからだ。

LLP形態の企業の業種を見てみると、サービス業が約43%、次の卸売業で12.6%、製造業が9.6%、不動産9.3%、建設7.8%となっておりサービス業が圧倒的に多い。当初は特に、サービス業は少ない資本から始めることが多く、容易に増資ができるLLPはサービス業にうってつけの形態だからである。しかし、最近の為替管理法の改正により、外国直接投資(外資によるインド国内への直接投資)が緩和され、数多くの分野で100%出資が認められるようになったこと、対外商業借入(External commercial borrowings、簡単に言えば、外国人によるインド国内への直接貸付)条件が緩和されたことを受け、LLPはより増資しやすくなったことで、サービス業以外への進展も進むだろう。

最近にもインド産業政策促進省はFDI規制の緩和を積極的に進めている。一つの大きな改革はLLPに対する外国投資である。以前は株式会社からLLPへの移行は政府承認事項だったが、今回の改革でそれを不要とした。さらにインド中央銀行はLLPに認めていなかった対外商業借入を撤廃し、自由に活用できるようにした。

LLPが会社法の枠組みから離れて会社運営上の柔軟性を有することは、経営面での関与を望む投資家にとっては、投資家への説明責任を強く必要とされないLLPへの経営に対して懸念を生じる。また実務面において、労働省や課税部門からはLLPより株式会社の方が取り締まりやいとの声もある。いずれにしても、LLPはより裁量のある自由な経営が許されるからこそ、経営者の強いモラルが必要であろう。