公共・サービス

インフラストラクチャー整備が急ピッチで進む

都市部に自転車シェアサイクル登場 変革していくインドの交通事情

Kayo Osumi
Kayo Osumi
2018/1/28

「インドに行ったら、オートリキシャのおじちゃんに運賃ぼったくられるんじゃないの?」インドの交通のイメージといったら、まだまだこんな感じでしょうか。

 

一般的に持たれているインドのイメージとは裏腹に、インド近年、都市部では凄まじい勢いでライフスタイルが変化しつつあります。

 

UberやOlaの発達は有名なところでもありますが、今回フォーカスするのはシェアサイクルについてです。

 

直近では、2017年末から2018年にかけて、デリー・グルガオンにおいてシェアサイクル事業Mobycyがスタートしました。

https://tech.economictimes.indiatimes.com/news/startups/mobycy-debuts-dockless-bike-sharing-app/61963037

MobycyのHPより(スクリーンショット)

 

利用者はアプリをダウンロードし、デポジットを支払えば、Mobycyの自転車が設置されている地点から、自分が乗りたい地点まで利用することが出来、その金額は30分でわずか5ルピーという破格で利用することができます。月額利用にすると、わずか170円程度で1日2往復(1往復60分以内)の利用が可能です。2017年末にはアメリカの投資家から50万ドルの資金を調達し、好調なスタートを切っています。

 

創業者の一人であるAkash Guptaは、インド・モバイルウォレット企業2強の1社「Mobikwik」でもともとVice-President をやっていた経験の持ち主。今回のシェアサイクルの仕掛けにより、交通の利便性の向上とともに、利用者の習慣の変化や健康に対する意識の向上も狙いとして考えています。現在5000台準備されているアプリケーションとGPSに紐付けられた自転車は、次の6ヶ月で主要な地下鉄の駅と大学での設置を増やし、50,000台にまで増やすことを目標とされています。

参考文献:https://yourstory.com/2018/01/ex-vp-mobikwik-urging-india-cycle-last-mile-connectivity

 

 

2017年は数々のスタートアップがシェアサイクル市場に参入

2017年10月には、カーレンタルのスタートアップ企業、ZoomCarもPEDLというシェアサイクルのビジネスをバンガロール、コルカタ、そしてチェンナイから500台の規模でスタートさせています。ZoomCarの創始者であるGreg Moranは5km以内の交通移動に関してこのシェアサイクルの文化を浸透させ、1年以内に10,000台の利用とインド全土27都市でのサービス提供を今後の目標として掲げています。

参考文献:

https://tech.economictimes.indiatimes.com/news/startups/zoomcar-is-set-to-start-a-bicycle-sharing-business-in-bengaluru-chennai-kolkata/61031394

 

バンガロールではInMobiの創始者であったAmit GuptaはYuluというシェアサイクルをスタート。渋滞によるストレスは、ビジネスの機会損失、心身の健康まで損ねると主張し、新しい交通の手段としてシェアサイクルを利用者に浸透させたいと考えています。

参考文献:

https://yourstory.com/2017/11/yulu-bikes-shared-economy/

 

インド最大のタクシー配車アプリOlaはOla Pedalという名前の自転車レンタルサービスをIIT Kanpur構内で試験的にスタートしました。若者の中での利用者増加に手応えを感じたOlaは、セキュリティやQRコードによる管理、GPS追跡の精度を向上することを宣言しています。

参考文献:https://tech.economictimes.indiatimes.com/news/mobile/ola-other-startups-may-take-the-bicycle-lane-to-an-untapped-segment/61888638

 

 

インド市場でシェアサイクルは流行るのか

少し前の記事になってしまいますが、2015年6月CNBCに書かれていた記事から推測するに、インドにおけるシェアサイクル事業は成功しているとは言い難い状況です。大きな要因として、インド政府の事業支援が十分でない点と、ターゲットとなる中間層にとって、自転車利用の習慣があまり浸透していないことにあると指摘されています。

 

本文より引用

Schlebusch’s dream may not be an easy one to fulfill. Attempts in recent years to start schemes in India have failed, largely due to lack of government support. Under-investment in road infrastructure and cultural disengagement with the bicycle among the country’s middle class further hinders the task.

 

 

参考文献:

https://www.cnbc.com/2015/06/12/public-bike-sharing-business-is-thriving-but-not-in-india.html

 

過去の事例をご紹介すると、2010年にムンバイにCycle Chalo!というシェアサイクルのサービスがありました。

参考文献:https://www.thebetterindia.com/4172/cycle-chalao-mumbais-first-bike-sharing-system/

 

このサービスは2人の社会起業家によって大学の中で作られたサービスでした。世界的に見ても人口密度の高いムンバイで、通学時のオートリキシャのドライバー探しや料金交渉にストレスを感じたことから思いついたシェアサイクルの発想でしたが、当時は学生証のID等で利用者の管理をしていました。

 

当時からマネタイズの難しさは指摘されており、自転車の管理は手作業で手間がかかるのに対し、収入源は自転車の利用料と広告費のみだったため、サービス開始時点で「資金の支援が必要」と訴えていました。

 

実際に資本金がショートしてサービスの提供は終了。その際には、公的機関からの資本支援と、テクノロジーによるサービスの簡易化が成功の鍵になるのではないかと分析されていました。

 

その視点においては、近年スタートしているシェアサイクル事業においては、どこもアプリによる自転車の管理やGPS,Blutoothなどの機能を搭載し、仕組みを簡易化させています。

 

 

世界的に見るとシェアサイクル事業は盛り上がりをみせている。

 

今年の初めに、中国発シェアサイクル事業Ofoはシアトルに1,000台の自転車を抱え、米国市場に参入しています。New York発Citi Bikeは10,000台の自転車と23万6,000人の加入者を獲得しており、アメリカで最大となっています。

 

北京にはすでに70万台の自転車と1100万人の登録ユーザーがいて、首都人口のほぼ半分です。投資家は中国でのシェアサイクル事業の成功を見て、このビジネスモデルはインドでも同様に流行ると考えています

 

2016年より1年3ヶ月ほどグルガオンに滞在していた筆者の見解としては、都市部では急速にインフラが整い、道路の整備はされてきているものの、もともとの交通ルールの悪さもあり、自転車の利用は難しいのではないかという考えです。エリアにもよりますが、デリー・グルガオンにおいては、夏の熱さと冬の大気汚染は自転車利用には到底向かない環境でもあります。中間層の自転車に対する概念も、大きく変革するのはなかなか難しいのではないかと予想しています。

 

ただし、都市部のビジネスマンを中心にライフスタイルも変化しているインドにおいて、シェアサイクル市場は2020年までに10億ドル以上の市場になるとMobycyのAkash Guptaは予想しています。非常に大きな市場です。

多くのスタートアップが注目しているシェアサイクル事業においては、彼らなりの隠れた成功法が実はすでに考えられているのかもしれません。