産業

インドの農業スタートアップ「土壌を使わない水耕栽培」について

Kayo Osumi
Kayo Osumi
2018/2/14

水耕栽培は、土壌を使用せずに、水をベースにした栄養豊富な培地で植物を栽培する方法。この方法は、土壌中で植物を栽培する方法と比較して、使用される水の量を大幅に削減
Triton Foodworksはインドの様々な拠点に、200,000平方フィート以上の面積を有し、水耕栽培を利用して、毎年700トン以上の無残留果物や野菜を生産
健康志向に伴い、無農薬野菜の需要も高まり、都市部での販売が容易な点は、水耕栽培のメリットは大きい。環境へも配慮もある

 

2018年現在、インドの総労働人口のうち、51%以上が人形や漁業などの農業に従事している。

インドの国全体のレベルをあげるためには、農業関連の分野での成長が欠かせない。

モディ政権は2022年までに農家の所得を2倍にする目標を掲げており、そのために農作物の最低購入価格の引き上げや農家向けの優遇金利ローン、収穫高をあげるため設備を整えたり、種苗・肥料の品質向上、収穫後の廃棄農作物の削減などに取り組んでる。

そこでインドでは農業関連のスタートアップ企業がここ数年で多く立ち上がっている。

Agritechの分野で扱われているテーマは下記のようなものがある。

 

1.土壌を使わない栽培

2.ドローンを使った土壌管理

3.農家と小売の仲介業の撤廃

4.農家向けe-commerce platform

5.農機のレンタル platform

6.家族経営の農家創造

7.農業に使う水を減量

8.農作物のオンライン販売

9.農作物のデータ管理

10.機械導入による労働者の賃金カット

 

 

今回はその中から1の「土壌を使わない水耕栽培」について取り上げる

 

土壌を使わない栽培

インドの都市農業の可能性を広げるべくスタートした水耕栽培。

生活水準が上がると同時に、市場で販売されている農薬や、食品の危険性について、都市部を中心に懸念が高まってきている。

1960年代半ばに起こったGreen Revolutionから、インドで使われる農薬の量は増加。近年も農業ブームで盛り上がっているインドだが、同時に農薬の大量摂取も懸念する人が増えている。

そこで考案されたのが「水耕栽培」だ。2014年にデリーでスタートした Triton Foodworksは、いち早くこの水耕栽培に注目した。

 

水耕栽培は、土壌を使用せずに、水をベースにした栄養豊富な培地で植物を栽培する方法だ。この方法は、土壌中で植物を栽培する方法と比較して、使用される水の量を大幅に削減する。

いくつかのケースでは、従来の土壌ベースの農業と比較し、水耕栽培法では水を80%少なくするという実績も出ている。これは水不足になりやすい都市部においては画期的な方法だ。

さらに、土壌栽培と同じスペースに4倍の作物を植えることも可能だ。

 

 

Triton Foodworksのきっかけ

Triton Foodworksは、Deepak Kukreja、Dhruv Khanna、Ullas Samrat、Devanshu Shivnaniの4人の友人によって、2014年9月に都市農業の実験としてスタート。

2014年初頭、Ullasは、肺の病気になった母親のためにモハーリ州の農地を開発する方法を模索。

医師は「農場での生活は、ほこりや関連する諸問題が、母の健康のためにならない」と鋭く指摘したものの、Ullasは母のためにも、新しい衛生的な農業のスタイルを生み出したいと研究に勤しんだ。

その頃、シンガポールにいたDhruvは、スタートアップに属していたものの、インドに戻ってなにか新しいチャレンジをしたいと思っていた。

そんな2人は意気投合し、インドで新しいビジネスをスタートすることで合意。

「経済的かつ、生物学的に意味のある物で世の中にインパクトを出したい」という2人の思いと、多くの研究を重ねた結果、「水耕栽培」という一つの選択肢にたどり着いた。

Dhruvはシンガポールのいくつかの水耕栽培農場を訪問し、それがどのように機能するかを直接研究。 Ullasは、水耕栽培に関する研究を重ね、組織をより強化するために、DeepakやDevanshuもメンバーに加わった。

 

 

Triton Foodworksの実績

Triton Foodworksは、殺虫剤や殺虫剤の代替品として、アーユルヴェーダのレシピやバイオコントロールを利用し、害虫やその他の感染症にたいする予防を取っている。開発の結果、通常の方法で栽培された同じ量の食糧を、面積のちょうど約8分の1で、水の使用量を80パーセント少なくして栽培を可能としている。

さらに、5エーカー以上の水耕栽培を国内3拠点に構えた。Mahabaleshwarのイチゴ農園では1年で20トンのイチゴを栽培し、Maharashtra のWada地区では1.25エーカーの設備が、400トンのトマト、150トンのきゅうり、400のほうれん草と、700束のミントを栽培した。

HyderabadやManesar 、Bengaluruにおいて水耕栽培に興味を持つ人へのアドバイスも始めた。

現在、インドの様々な拠点に、200,000平方フィート以上の面積を有し、水耕栽培を利用して、毎年700トン以上の無残留果物や野菜を生産している。

何もかもが上手くいったわけではない。政府に賄賂を支払わなかったため、持っていた農園を解体されたという苦い経験も持つ。

インドの農業では、まだベンダーの支払う金額が多いことが一つの大きな問題となっている。

 

Triton Foodworksは都心部の新しい栽培方法としては、他地域へのビジネス拡大の様子を見て順調に拡大できているといえる。

健康志向に伴い、無農薬野菜の需要も高まり、都市部での販売が容易な点は、水耕栽培のメリットは大きい。環境へも配慮もある。

ただ、田舎の農家にとって、水耕栽培が必ずしも収入源につながるかはわからない。設備費用等も考慮しなければならない。

技術を要する分野であるため、日系企業が参入するには、力を発揮できる分野かもしれない。今後のインド人の食習慣の変化に伴い、どこまで農業ビジネスを拡大していくかは注目される。